はじめに
INTRODUCTION
障害年金 は、障害をお持ちの方が申請することではじめて受け取ることができる年金ですが、制度についての周知が進んでおりません。本来は受給できる権利がありながら、受け取っていないという方も多数いらっしゃいます。障害にともなって最も多くの方が感じる不安は経済面のことです。年金を受け取ることで生活の支えを手にすることは、障害を抱えながら暮らしていくために欠かせません。
はじめに◆公的年金の種類について
日本の公的年金は、日本に住んでいる20歳以上60歳未満のすべての人が加入する国民 (基礎)年金と、会社員や公務員が加入する厚生年金の2階建てになっています。
※ 公務員が加入していた共済年金は平成27年10月から厚生年金に統一されました。
2階部分 | 厚生年金 | 会社員や公務員などとして勤務している人が加入 |
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1階部分 | 国民 (基礎) 年金 | 日本に住んでいる20歳以上60歳未満のすべての人が加入 |
保険料の納付について
国民年金の保険料は原則として加入者全員が同じで定額です。
会社員・公務員は、勤務先と折半する形で、国民年金保険料を含んだ厚生年金保険料(共済年金保険料)を納付することになっており、保険料は収入に対して定率 (平成29年~18%) となっているので、収入に応じて変動します。
そのため受け取る年金も、国民年金分に厚生年金分が加算された金額になります。
給付される年金について
年金加入 (納付) 期間がある方が受給要件に該当すると年金が給付されます。
給付の種類 | ①老齢 老齢厚生年金 老齢基礎年金 | ②障害 障害厚生年金 障害基礎年金 | ③遺族 遺族厚生年金 遺族基礎年金 |
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受給要件 | ①65歳に到達したとき | ②障害があり、認定を受けたとき | ③生計維持関係にある被保険者が死亡したとき |
受給者 | ①被保険者本人 | ②被保険者本人 | ③被保険者の遺族 |
障害年金◆よくある質問
- 障害者手帳 (身体・精神保健福祉・養育) との関係はどうなっていますか?
- 障害者手帳と障害年金の等級に相関関係はありません。まったく別物と考えて頂いた方が無難です。精神保健福祉手帳と障害年金 (精神) は共に3級までとなっており、概ねの目安となります。診断書作成期日や様式が若干異なりますのであくまでも等級の目安となるだけです。別の例では身体障害者手帳4級 (人工関節で現在は該当しません) ですが、申請が通れば障害厚生年金3級となるケースもあります。
障害者手帳は、障害者雇用の際に提示・年末調整の障害者控除の対象・障害者枠での就職活動等に使われます。ともに診断書により判定される点は同じですが、等級の認定基準・提出先・更新時期等は異なりますのでご注意下さい。
- 65歳より前に貰える年金はありますか?
- 制度の移行期間となっていて複雑な状態です。
1. 老齢基礎年金の繰り上げ受給
2. 特別支給の老齢厚生年金
3. 障害年金
4. 特別支給の老齢厚生年金の特例
1.の繰り上げを選択すると支給額が減額され、障害年金の申請が出来なくなります。
2.在職中であっても受給することが出来ますが、給与・賞与・年金額により年金額の調整 (減額) がされることもあります。
3.障害年金を申請し認定されれば障害年金を選択することが出来ます。
4.特別支給の老齢厚生年金を受給しており、退職 (厚生年金に非加入) している方で3級以上と認定された方は定額部分が増える特例を選択することが出来ます。
上記4つの可能性がありますので年金事務所での試算をした上で障害年金の申請をするかどうかをご検討くださいとお伝えしています。概ね40年の納付状況に左右されますので個人差が大きいです。
- 16年ほど前から覚せい剤の後遺症で精神病院に通っていました。障害手帳の2級を持っているのですが、障害年金を受給できると聞いてお電話しました。ご相談したいです。
- 薬物中毒により障害者となった場合、医師が薬物と現在抱えている障害が薬物から発症したものだと認めている限り障害年金はもらえません。
根拠条文を確認すると、『国民年金法第69条 故意に障害又はその直接の原因となった事故を生じさせた者の当該障害については、これを支給事由とする障害基礎年金は、支給しない。』
『第70条 故意の犯罪行為若しくは重大な過失により、又は正当な理由がなくて療養に関する指示に従わないことにより、障害若しくはその原因となった事故を生じさせ、又は障害の程度を増進させた者の当該障害については、これを支給事由とする給付は、その全部又は一部を行わないことができる。』とあります。厚生年金保険法にも同じような条文があります。
現在抱えている障害との関連性を主治医に確認することが大切となります。
- 生活保護を受けていて障害年金を受給するように勧められています。
- 障害年金の申請と受給は可能なのですが、生活保護費の方が高額の場合障害年金が優先して支給されます。生活保護費は障害年金の金額を差し引いて支給されるため受給する総額が増えるわけではありません。障害認定により加算対象となり若干の増額となるケースはあるようです。
ご相談いただく中でお伝えしていることは、診断書代は実費でかかります。生活保護の期間にもよりますが、遡及で一時金が貰えた場合でもほとんどが市町村へ返還 (上記の通り重複期間については市町村は支払う必要が無い為) を求められます。合わせて医療費の負担分も請求となるため、ほとんどのケースで手元には残りません。残っても半年生活出来るだけの金額があれば生活保護が止まりますと聞いたケースもあります。我々への報酬について、経費として認定されるかどうかは市町村の判断となるケースが多く事前に市町村の担当者へ相談が必要となります。